(2)社会的公正を実現するための国際的仕組み

ソロスは、「政治・社会面での国際的な仕組みが強化されないまま市場のグローパリゼーションが進んできたために、社会全体としては極めてバランスの悪い発達の仕方になっている」とした上で、次の四項目の仕組み改革の提言を行っている。

<1>金融市場の不安定さを抑えること
<2>既存のIFTI(国際金融貿易機関〈注4〉)に内在する先進国に有利なバイアス(偏った見方・姿勢)を正すこと
<3>富の創出を助けるためのWTOを、貧困の緩和、グローバル規模での公共財の提供など、他の社会的目標に取り組むための同様に強力な国際機関によって補完すること
<4>政府の腐敗や抑制、あるいは無能に苦しむ国々の国民の生活の質を高めること(注5)

現在、社会的責任の遂行に企業がより積極的に取り組むことを世界規模で促すための、強制メカニズムを伴わないルlル作りが国レベルおよび国際社会レベルで試みられているが、このようなルlルづくりも、ソロスの挙げた項目に加えられるべきものであろう。
そのようなルール作りの中で企業(特にグローバル企業)にとって最も大きな影響をもたらす可能性があるのが、ISOが開発を進めている企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility CSR)の国際標準化の動きである。国際標準化の面でグローバル化の先導役を果たしているのはEUであるが、仮にEUが国際標準を域内の企業はもちろん域外の他国企業の市場への参入の条件にしたり、あるいは認証取得企業に何らかの優遇措置を適用したりするようになれば、国際標準を満たしていない企業は市場から排除されたり不利な扱いを受けることもあり得る。
ISO(International Organization for Standardization 国際標準化機構)は一九四七年に設立された、商品やサービスの国際標準を策定する機関である。当初二五ヵ国の参加でスタートしたが、今日では一00ヵ国の代表が参加する機関になった。ISOが大きな影響力を持つに至った一つの重要な要因は、WTOにおいて新たに定められたTBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)に存するといわれる。日本にはJIS規格等の国内規格があるが、TBT協定の発効により国際規格に合わないような独自の規格を国が採用することは、基本的に外国製品の輸入の障害であると見なされるようになったのである。つまり、WTOに加盟する国々は原則として国内規格をISO規格に合致させることが義務づけられている(注6)。
ISOはいわば、工業化社会が規格大量生産の経済システムを作り上げる上で技術的な基礎をなした財・サービスの標準化という共通尺度作りのエンジンの象徴である。そのISOが、ポスト工業化社会に登場した企業の社会的責任という企業の行動規範の国際標準化を設定する役割を担うことになったというのだから、考えようによっては歴史の発展が生み出した皮肉と言える。そもそも近代社会における商品、サービスの「標準化」の端緒は、軍隊と戦争に発しているということも人類の歴史に潜む皮肉で冷厳な真実かも知れない。橋本毅彦は、その起源とその後の工業化の発展のプロセスを淡々と次のように要約している。

互換性技術の発展と標準化の普及を歴史的に追うと、その要所要所で戦争とのかかわりが大きな役割を演じてきたことが見て取れる。フランスで互換性技術が発達したのは、戦場での応急修理が容易だからであった。アメリカで互換性技術を発展させ、製造現場で実現させることが出来たのは、軍の後ろ盾と軍人的な労働規律の強制があったからである。そして、産業分野や地方ごとの差異を超えて、全米中で標準規格が普及し、標準化が進展するきっかけを与えたのは第一次大戦であった。連邦政府が生産量を極大化すべく、フォードの大量生産方式を国内の製造体制に適用させ、標準化の徹底を図ったからである(注7)。

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