(1)方法

 

ドネーション(寄付)
寄付は最も古くからあるまた最も基本的な手法で、米国ではフイランソロピ1H寄付と考える向きもある。近代的金融・産業システムの生みの親である渋沢栄一は、人々が資金を出し合って産業を興していく手法、彼はこれを合本主義(株式会社制度)と呼んだが、この合本主義を日本に定着させようと努めた。社会事業にも熱心であった彼は、資金を必要とする人々の団体から寄付要請を受けると、同じ産業人仲間に寄付を呼びかけたといわれる。彼は非営利事業にも合本主義を適用させたかったのであろう。この手法は、同志を募り多額の資金を集めるという観点か’りすれば優れた手法である。しかし、この手法が過度に組織化されると、権威者が強制的に寄付を割り当てる傾向を強めることになる。かつての経団連はこの手法を使って、仲介者でありながら寄付金集めのコントロールタワー的役割を果たした。
企業による寄付は、その動機から二種類に分けられる。一つは「不承不承行う寄付」であり、もう一つは「納得して行う寄付」である。もちろん後者の寄付が理想の寄付であることは疑いを入れないが、現実には、様々な伝を頼った寄付要請は後をたたず(中にはゆすり、桐喝を伴うものもある)、どの企業もこうした寄付を扱う窓口と財布を持っている。しかし、昨今企業運営は厳しさを増しており、多くの企業は一定の基準を設けて雑多な寄付の整理に取り組んでいる。
もう一つの「納得して行う寄付」は、企業の社会貢献の考え方と手法が確立された九0年代から取り入れられてきている。益々多くの企業が企業理念とプライオリティの高い関心分野を明確化しつつあり、寄付もそういう観点から行われるようになっている。この場合、企業は二つの財布を用意する必要に迫られている。大きなプロジェクトや事業のための寄付が申請されるときは、企業はその案件を外部識者を加えた寄付審査委員会ゃ、経営会議などで審議する。そのための財源を用意しておく必要がある。しかし、昨今はNPO法人や任意団体からの寄付要請も増大してきており、こうしたいわば草の根団体からの寄付にも対応が求められている。そのためには、機動性に富み、小回りのきく対応が可能な寄付を行うためのあまり大きくない財布が求められる。日本企業全体の寄付総額を把握した数字は現存しない。国税庁の二OO二年度の「会社標本調査結果」によれば、税務統計上は企業寄付の合計額は四七八五億円にのぼる。しかしこの統計が全ての企業寄付を補足しているかどうかは不明である。仮にこの税務統計数値が実体をかなり反映しているとするにしても、その中に含まれている政治献金がどの程度の割合を占めるかは全くわからない(ただし、税務統計によれば、欠損企業〈赤字企業〉もかなりの寄付を行っていることがわかり、興味深い)
日本経団連が一九九O年から実施している「社会貢献活動実績調査」は、大企業の寄付の実態を的確に把握しており、大企業の実態を理解するには適切な資料である。それによれば、二OO一年における回答企業三三六社の一社平均寄付額は約二億一二000万円でピーク時(一九九一年)のおよそ四分の一二にまで減少している。

 

プロモーション
日本経団連は、企業が主催したり後援したりする事業や活動を「自主プログラム」という名称でくくっている。しかし、現実に実施される「自主プログラム」の中には、企業が民間公益団体と連携したり支援を受けたりして自主的に実施するプログラムもあれば、広告代理店などのプロモーターがPR用に持ち込む企画にスポンサーとして参加する「冠プログラム」もある。
後者のプログラムは、多くの企業が特に高度経済成長とともに採用してきたPR戦略に沿うものであり、テレビを中心としたマス媒体の普及と発展に負うところが大きい。こうしたプログラムの中で最も一般的な形態の一つは、コンサートの後援である(名演奏家や世界的楽団の後援等)。しかし九0年代以降、これらのPR的要素の濃いプログラムからの脱皮も図られている。たとえば、コンサートに障害者や高齢者など日ごろ鑑賞する機会の少ない人たちを無料招待したり、自社ビルのロビーを会場にして地域の人たちを招待したりするようなプログラムが出現するようになっている。社会貢献的要素を加味したりそれを主体にしたりするものにプログラムの内容が変化しつつあるといえる。また単に鑑賞の機会を提供するといった便宜性の視点からではなく、芸術文化に携わる創作家たちを支援するという本質的な問題にまで踏み込んでサポートするプログラムも誕生している。第一生命のVOCA展はその典型で、これは全国の美術関係者から若手現代美術家を推薦してもらいその全作品を展示し、優秀作品を第一生命が買い取るというものである。

自主プログラムの中で最も古典的なものは、前述したように七0年代に三菱商事が始めた「母と子の自然教室」である。大企業の金儲け批判にさ’りされた三菱商事は、利益の社会還元の一環として、母子家庭の親子を自然豊かな環境に招待して会社の従業員が彼らの受け入れ・交流にあたるという当時としては画期的なプログラムを開発した。今日、類似したプログラムを多く見つけることが出来る(アイシンボランティアの集い、コスモわくわく探検隊、デンソー環境教育。プログラムECOレンジャー二一等)。
近年、企業の自主プログラム作りのためのフィールドは確実に増大している。市民活動の活性化を背景に急速にその数をふやしているNPO法人を支援したり、総合学習の導入に伴う小中学生を対象としたボランティアプログラム作りに協力したりする、企業が増えている。
日本経団連の社会貢献実横調査によれば、二OO一年度の自主プログラムの支出は一社平均一億一000万円で、この一0年間多少のフラクチュエーシヨンは見られるものの、辛うじて一億円台を維持している。その内訳を見ると、支出額の最大を占めるのは芸術文化(二O%強)である。この分野でスポンサーシップが大きな一角を占めていること、即ちPR的効果を期待するプログラムが依然として有力視されていることが窺われる。

 

セコンドメン卜
セコンドメントというのは、会社の従業員を財団や民間公益団体に出向・派遣することである。セコンドメントの狙いとして二i三点ほど指摘できる。一つは自分の会社が作った財団や社団などを会社の目指す方向で運営してもらうために従業員あるいは役員を出向・派遣させることである。社会貢献活動を長期に安定して推進するための方策といえる。二つ目は、会社の役員などの天下り先とするためである。そして、三点目は、会社が人材を育成したり、将来の企業戦略のために情報やノウハウを獲得したりするためである。しかし、これまでのところその狙いが思惑通りに果たされてきたかというと必ずしもそうとはいえない。
センコドメン卜というのは、会社本体の仕事から別の仕事に移されることを意味する。企業人にとっての生きがいは、会社本体の業務に携わりながら地位を高めることによって富と栄誉を獲得することである。したがって、セコンドメントは、概して当の本人に積極的なモチベーシヨンを与えることにはならない。特に、工業化を目指す上昇志向の高いこれまでの企業風土の中では、民間非営利の活動を専業とする仕事につくことは、極端な言い方をすれば正規のコースを外されたという意識を生むものであったろう。ごく一般的な言い方をすれば、セコンドメントは、功なり名を遂げた人の名誉的地位付与として行われたり、あるいは当り障りのない人事という意味で可もなし不可もなしという人材の行き先として考えられたり、さらに極端には行き場のない人の処遇という形で行われてきたものであった。
しかし、脱工業化の進展、とどめようもない規制改革と地方分権の流れ、NPO法人の急速な増大、企業の倫理性と社会性を求める企業内外の声の高まり等の中で、社会と企業を結びつける架け橋の役割へのニーズは強まっており、そういう人材と専門部署あるいは組織を必要とする企業は増えてくるに違いない。今後は、財団などのいわゆる公益法人だけでなく、市民活動を行うNPO法人で働く企業からの出向者も増えてくることだろう。結果として企業と民間公益組織を結ぶコーディネーター機能に厚みがつくことが期待される。

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