一 企業の社会貢献の定義

企業の社会貢献活動を定義ずつけるのは難しいことではない。それは、「企業が自主的に社会的課題解決のためにその行為から直接の利益を得ることを目的にせずに取り組む活動」のことである。もちろん企業の本来活動自体が福祉や保健医療の改善・向上に貢献している場合もあり、その中には採算を度外視して行われている事業もありえるから、「社会的課題解決のために利益を目的にしない活動」というだけではやや不十分であるとも言える。「社会的課題解決のために利益を目的にしない活動」というのは、もっと言葉を補えば「本業以外に、本業とは別に」行う活動ということになる(「社会貢献活動の類型について」〈日本経団連調査アンケート説明資料〉次頁参照)。
つまり、企業の社会貢献活動とは、営利を目的とする企業が行う社会の利益を目的とした非営利の活動のことである。「企業」という主体の違いを別にすれば、類似した活動を行っているのは、公益法人やNPO法人、学校法人や社会福祉法人などの非営利で社会の利益を追求する組織である。こうした社会の利益を追求する非営利組織を定義するとすれば、「自発的に社会的課題の解決をミッションとして利益を得ることを目的にせず活動を行う組織」といえる。企業の社会貢献活動と異なるのは、「主体」の違いはもちろんとして、このような非営利組織は、社会的課題解決をみずからのミッション(使命・本業)としていることもある。企業は社会貢献活動を本業として行っているわけではないので、多くの場合そしてNPO法が導入されて以降、企業の社会貢献活動は社会的利益を追求する非営利団体の活動を支援したり、非営利団体とパートナーシップを組んで推進するケースが増えてきている。

社会貢献活動の類型について

各企業の本業以外の分野において、社会の役に立つこと、異文化の相互理解、国際社会への貢献を目的とする活動ならびに企業が社員・役員と協力しつつ行う活動で、自社の利益に直接つながらないもの。
具体的には以下のような活動を社会貢献活動と見倣している。
(1)経団連募金等への協力をはじめとする寄付(金銭・現物)
(2)自社が保有する体育館・グラウンド等の施設開放
(3)自社が実施する社会貢献事業〔自主プログラム〕
(4)自主プログラム等の社会貢献活動への社員参加
(5)企業財団・公益信託を通じた貢献
(6)社員・役員によるボランティア活動に対する支援
(7)社員・役員によるコミュニティ活動に対する支援
(8)営利を目的としない事業に対する出資・協賛・後援
(9)その他、社員・役員による社会貢献活動に対する支援
他方、本調査においては、以下のような活動は社会貢献活動に含めない。
(1)政治献金
(2)関連営利法人への寄付
(3)社員の福利厚生の充実を主たる目的とした活動
(4)業務遂行上必要な経費として損金算入が認められる業界団体等の会費
(5)広告・宣伝を主たる目的とした事業
(6)営利を目的とした事業に対する出資・協賛・後援

日本経団連調査アンケート説明資料

社会全体における企業の社会貢献の果たしている一般的な役割は、企業が民間の立場から社会的課題解決に直接真正面から取り組むというよりは、相対的な意味においてではあるが、むしろ非営利組織の活動を支援することによって社会的課題を前進させることであると言えよう。しかし、こうした一般論は、社会における企業の役割に対する人々の認識の変化に伴って変容することもありえる。最近世界的な潮流となりつつあるように見える「企業の社会責任(CSR`Corporate Social Responsibility)」を企業評価の基準として導入しようとする動きの中で、社会貢献を企業の主要な社会的責任の一つの要素と捉える考え方が優勢になっている。社会責任の中に社会貢献を組み入れるというのは、社会責任の概念を思い切って拡張することを意味する。それはコンセプトの再定義化を迫るものであり、私の考えでは容易な定義の修正は、両者(責任と貢献)の位置づけ・関係を不明確にする恐れがあるが、いずれにしても国際社会の認識は、「貢献」の「責任化」への方向に変化しているようである。こうした動きの根底には、企業は国家や国際社会が抱えている社会的問題や課題の解決に単なる貢献としてではなく責任をもって義務として取り組むべきであるという考え方が働いていると考えられる(CSRについては、本稿の最後で論じることとしたい)。
企業の社会貢献は、またボランティア活動と類似点を持っていることも指摘しておくべきだろう。ボランティア活動とは、「人あるいは人々が自発的に社会的課題の解決に対価を求めることなく組織を通じて参加すること」と定義ごつけることが出来るが、企業の社会貢献は、「自主性」、「非営利性」、「社会的課題への参加」という点でボランティア活動と共通点を持っている。主体の点でも、企業の従業員は「人または人々」の一部を構成しているわけであるから、その意味からも企業の社会貢献とボランティア活動は近い関係にある。九0年代に入って初めて我が国に企業の社会貢献活動の手法の一つとして導入された従業員のボランティア活動の支援が、瞬く聞に多くの企業の採用するものとなったのは、両者の関係が本来極めて近いものであったことに起因していると見ることも出来る。

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